強制アルバイト①
「強制アルバイト」
どういうことなのか?時は前後する。
ある日、富永が私に携帯電話でバイトの話を持ち掛けてきた。つまり副業。
パチンコ屋で閉店後のパチンコ台の清掃バイトのことだ。
私は即座に断った。私はパチンコが大嫌いだから関わりたくない。
そもそも介護職という本職があるではないか。それでもヘトヘトなのに。
しかし富永は必死に食い下がってきた。
しかもそのパチンコ台の清掃業者に勝手に話をつけてきたというではないか!
私は富永に厳重に抗議した。ふざけんなよと。
「siroukiiさん、あんた夜はゆっくりしているんでしょう!その時間をバイトにするんだよ!時間の有効活用しましょうよ!」
「私がパチンコ嫌いなのは分かっているだろう!」
「パチンコやれというわけじゃないでしょ!ただの清掃だよ!」
「ふざけるな!!さっさと断れ!!」
「そんな言い方ないでしょ!」
「だからなんだ!」
「私はsiroukiiさんに結婚式や披露宴の費用を捻出してほしいと思っているから。
そのためにアルバイトを決めたんだよ!」
「何が結婚式だよ!人の嫌がることをやって楽しいのか!」
「siroukiiさん、私の顔に泥を塗るつもりか!」
「そういう話ではないでしょ!」
「そういう話だよ!」
「そもそも本業があるだろうが!本業に集中したいんだよ!」
「介護の経営者に忠誠を誓ってどうすんの!」
「何が忠誠だ!」
私と富永は激しく怒鳴り合った。
勤務中でも私の携帯電話に着信がかかってきて、なお説得してくる。
結婚式とあったが私が結婚した時に式や披露宴の費用を捻出してほしいからなどと
勝手に私の分までバイトの話をつけたってことだ。
前にも述べたが富永は既婚者であり幼い子供がいる。
だから結婚式や披露宴をやって一人前という考え方に染まっているのか。
現在は価値観が多様化している。貧困化、格差社会もあるだろう。
身内だけの式だけでもOKという人もいれば
式を挙げる金があれば生活費や結婚そのものにかかる費用に回したいという人もいる。
女性は結婚式や披露宴を挙げたがっている人ばかりではない。
挙げたくない人もいる。そんな人も身内にはいた。
もちろん、派手な式や披露宴を挙げる人を否定はしない。幸せになってほしい。
そもそも私は「相手」がいない。子供のころからの激しいいじめにて人間歪んでしまった。コミュニケーション障害である。あらゆる出会いの場で失敗してきた。恥をかいてきた。屈辱的な思いも何度かしてきた。いまもそう。来世に期待している。
若き日のいじめが人間をどれだけ歪めるか。いじめの恐ろしさがそこにある。
ま、私が万が一結婚できたとしても華やかな披露宴会場にて私が主役になっているなんて想像もできないけどね。
何日も富永と押し問答をした。ここまで執拗な人間は今まで見たこともなかった。
過去のいじめですら加害者たちは執拗だったが、富永はさらに上を行っていた。
私は心が折れ始めていた・・・