静かに地獄が始まる①
さて富永(仮名)という曲者を迎えたわけだが。
いきなり地獄が始まったわけではなかった。
富永も本性を隠しているのか分からないが最初はそんなふうには見えなかった。
むしろ明るく腰が低く、昔サッカーをしていたらしかった。
それは大学時代の高岡そのものではなかったか。共通していた。
明るくて(ヘラヘラして・お調子者)腰が低くて(最初だけ)体育会系で(柔道)。
またか。なぜ見抜けなかった?
ヘラヘラしたお調子者は中学時代の栗山でもあった。
またか。
後悔先に立たず。・・とにかく坂野さん(仮名)や富永と仲良くなってしまった。
富永の本性を現す予兆はその時に感じなかったのか?
今から思い出してみるとあったかもしれない。
最初に配属された施設の同じ棟では職員同士で飲みに行ったりもした。
その居酒屋の酒宴の席でこんなことがあった。
坂野さんはカシスソーダというカクテルを頼んで店員が持ってきたら隙を見てそのカシスソーダを取って飲んでしまった。なんとそれを2~3回繰り返していたのだ。
富永は笑いつつ得意げに澄ました表情をしていた。
坂野さんは改めてカルーアミルクを注文して飲んでいた。
もちろん、坂野さんもこのことに関してゲラゲラ笑っていた。富永にしても坂野さんにしても悪ふざけの範疇なのだろう。私もそう思っていた。
でもよくよく考えてみれば、いくら仲が良い間柄の悪ふざけとはいえ、他人の注文の品を横取りするか?
「親しき仲にも礼儀あり」
その言葉を忘れてはいなかっただろうか。
あと、富永は些細な発言とか他力本願な面とかもしばし見られた。
普通なら富永の言動でおかしいと気づき距離を置き始める。
しかし厄介なことに坂野さんの存在があるから、私は富永と距離が置けなかった。
これは厄介だった。どうすればよかったのか。
それ以前に富永の本性が見抜けなかったわけだが。
全く私は愚か者の大バカ者だ。
駆け足で進めたい。富永はギャンブル好きの一面が出てくる。
パチンコと競馬だ。それは次回に言及したいと思う。