「地獄大学」33 大学時代の終わりに②
卒業が近づくにつれて、もう一つ憂鬱なことがあった。
高岡が私へのいじめを録音したカセットテープ類だった。
はじめは私が引き取ろうと高岡に持ち掛けたが高岡はそれなら金を出せと言ってきた。
かなり高額な値段で。ふざけるな。だったらお前が責任もって処分しろよ、間違っても親御さんに見られたら困るのはお前だぞと言っておいた。
今から思えば高い金を出してでもテープ類を取り戻しておくべきだったか。
別に高岡を訴えるつもりはないし、これからもない。
しかし私がいじめを受けた証拠をこちらが握ることになる・・。
もちろん私にテープを渡したくないから高い金を出せと言ってきたかもしれないが。
また判断間違った。テープだけでなく当時はコンビニやスーパーなどで簡易カメラが売っていた。「〇るんです」などのカメラ。当時はスマホカメラなんてなかったから。
その簡易カメラでいじめシーンを撮られたもんだ。よく現像してくれたなと思われるかもしれないが、よそから見れば悪ふざけにしか見えないし。
その写真やテープを今も高岡は所有しているのだろうか。今も笑いネタにしているのだろうか。他人に見つかればタダでは済まない。処分してくれていることを祈る。
卒業間際に紺野はレンタルビデオ店で18禁のビデオを俺のために借りて来いと言ってきた。嫌だと言ったが無駄だった。そのためにレンタルビデオ店のカードを作った。アホみたいだよな。
紺野のアパートの部屋の処分で本類を古本屋に行って売ってこいと命令された。
ダンボールいっぱいに詰めてそれを抱えて街を歩いた。カッコ悪かった。
卒業式まで日がしばらくあった。地元でバイトをしなければならなかった。残り少ない片銀市での生活費稼ぎや悪党どもに取られた金を取り返さないといけない。
定番だったサービスエリアの皿洗いは募集していなかった。以前にも書いたが
バイトの職場で学歴について嫌なことを言われた思い出もあるし。
そこで見つけたのが道路工事の交通誘導。
そこでしばらく働くがとにかく大変だった。ひっきりなしに車がやってくるから精神的に休まる暇がない。下手すれば交通事故になる。責任重大だ。ドライバーから怒鳴られたりしたこともある。二度とやりたくない。
もちろん仕事だけでない。先輩から説教を結構受けた。
お前は声が小さい、覇気がない、ネチネチと休憩中に小言を食らった。
私の劣等感を刺激するには十分だった。情けない。
とにかく金を稼いだ。
悪党連中と顔を合わせるのもあと少しだけとなった。