「地獄大学」22 中高時代の記録まで踏みにじられる②
実家に着き、母親は少々ぐったりとしていた。
その夜、テーブルの上に刺身と日本酒。何の接待かと思った。悪い予想?分かり切ったことだ。いじめ事件について両親から問いただされる。憂鬱だった。
「大学でどんないじめを受けているんだ」
「なんていう名前の奴なんだ」
「どんないじめを受けているんだ」
両親は面接官の質問みたいに私にしつこく訊いてくる。
私は何とかはぐらかしながら断片的に答えた。
ああ、屈辱だ、屈辱だ、屈辱だ。親にバレた。大学生にもなってこんなこと・・・・。
ああ、なんて秘密をバラしたんだ、あの女性僧侶は・・・。
あんな寺院なんかに相談なんかするべきじゃなかった。私は後悔した。
数日後、私は中学校と高校の卒業アルバムを持って電車にて東京駅八重洲南口に向かった。
あの夜行バスに乗った。
正直気が重い。悪党連中に直前にも念を押された。持ってこなかったら何されるか分からない。紺野は反社のような雰囲気を醸し出していた。
片銀市内に着いてから、愚論荘に向かう直前に私は必死に般若心経を唱えた。
悪党連中に会う直前には必ず唱えた。ご利益はあったのだろうか。分からない。
「約束のモンは持ってきたんだろうな」
紺野はすごんだ。
私は卒業アルバム仕方なく差し出した。
連中はまず中学時代のアルバムを「物色」した。
ページをペラペラめくり写真を出してアレコレ言いゲラゲラ笑っていた。
私の写真や私が映っている写真にまでケチをつけた。それだけならまだいい。
なんとペンを取り出してアルバムに落書きを始めたのだ!
「何をするんだ!やめろ、やめてくれ!」
必死に止めるも無駄だった。連中につかみかかるも殴られた。角松ほどボコボコではなかったが。
連中が気になる女子には「かわいい」だの書き込み、連中が生意気そうと思う男子には
「この野郎」だのまあ、低俗な書きこみだった。
自由に絵を描いてほしいという真っ白なページには好き勝手にぐちゃぐちゃに落書きされた。
高校のアルバムも同様だった。
悪党連中は私の中高時代にまでズカズカと土足で上がり込み暴れまくった。
改めて、中高の卒業アルバムを読み返す。ひどい落書きだ。やれやれ。
とても第三者には見せられない。近いうちに卒業生の名簿や住所録の部分だけを残して処分しようかなと思う。証拠として残しておくべき?今更、あの連中を訴えるつもりはないし(もうそんな気力はない)。連中はたぶん家族を持っているだろうし私も大学時代のいじめ云々で忙殺されたくない。平穏な日々を過ごしたいんだ。
卒業アルバムで思い出したが、私は二度と同窓会には出席しないと決めている。
いい年して独身で女の影なし。そんな私が行っても恥をかくだけ。愚かだ。
2度くらいか同窓会の案内が届いたがいずれも断りの葉書を出した。仕事が忙しいとの理由で。
「目的意識もないのに大学なんて行かないもん」
とつぶやいた、あの女子は私不在の同窓会で私に対して何を思っただろうな。知る由もない。
あのつぶやきは何故か私の心に残っている。大学ってなんだろうな。大学時代ってなんだろうな。