完全無視作戦①
「また金融業者から金を請求された・・・助けて」
富永からメールが来た。私は富永から縁を切ることを決意した。
このまま会い続ければ金をたかられ続けられることは明白。
逃げても逃げても追いかけてくる。こうなったら無視するしかない。
遅すぎた決断だった。異常者から縁を切るという決断だ。
私はそのメールを無視した。
そして一日経ってまたしても富永からのメール。
「返信しないんですか?まーいつものことですけどねえ」
そして無視して3日くらい。
「お願いですからメールください。金融業者がうるさいんですよ。弁護士だって」
敬語調のメールが来た。業者だの弁護士だのハッタリだけはうまい。
さらに無視する日を続けたら
「おい!!返事しろ!!ふざけるな!!シカトかよ!!」
罵倒口調になったメールを送り付けてきた。
メールだけでない。もちろん電話もしつこくなってきているけれど
電話に出なかった。ドライブモードにして出られないようにした。
どうせ私あての電話なんて勤務変更とか業務上のことでしか鳴らないから。
富永からの着信履歴がすごい。ひどい時には数分おきに記録されている。
夜間、私が自宅にいるとき、部屋の電気がついていることを富永は確認したのか
「出て来いよ。部屋の明かりがついているぞ。今すぐだ」
とメールを送ってきた。なんと!そのメールには私の自宅の写真が添付されていた。
自分の携帯電話のカメラ機能を使って撮影したのだ。
なんてやつだ。あきれつつも私は部屋の電気を消した。
「おい!ふざけんな!」
とメール。私の自宅を監視している様子が分かった。
それから富永の着信履歴攻撃とメール攻撃は激しさを増した。
昼夜問わず、私の自宅を撮影しメールに添付して送信してきた。
自宅だけでない。私の勤務先の施設の建物を撮影し、メールに添付してきたことも何度かあった。
「今仕事でしょ。仕事の帰りによろしく頼みますよ」
私が夜勤中の事。私が夜勤者専用の駐車場に車を停めていると私の車の横に自分の車を停めてそれを撮影して送ってくる。
毎日毎日、何をやっているんだか。
自分の自宅と私の自宅、そして自分と私の勤務先をグルグル回るだけの生活をしているのだ。富永ってやつは。
つくづく異常者だと思った。富永にまとわりつかれている時も地獄だったが
こうしてしつこく携帯電話で絡まれている時も地獄には違いなかったが
もう金を巻き上げられなくて済む、という安心感もあり気分が楽になった。
もっと早くこうすればよかったのだ。
そもそも富永を見抜くべきだったけどね。