「地獄大学」3 地獄始まる
「ありがとう、片銀市。ありがとう、片銀大学」
私は某学部校舎のタワー上部の窓から遠く片銀市内を眺めていた。大きな街の住人になったから余計に気が大きくなっていたかもしれない。能天気な当時の私はそう呟いていた。
大学構内を歩くと女子学生はみんな魅力的だった。そりゃそうだ。今を時めく若者だからだ。皆奇麗な脚を出して闊歩していた。ま、いじめで恋愛の経験できなかった私が何をいっているんだか。
いつもと同じように高岡の住まいである愚論荘に毎日訪れ、自らのこと、家族のことを語り合った。そして私の下宿である北村荘にも高岡を2~3回は呼んだかな。
自分の部屋は四畳半だが家具が少ないため広く感じた。テレビすら畳に直接置いていた。高岡はテレビを腹ばいになって見ていた。
「好きだなあ。こういう態勢は。まあ毎週来たいね」
しかし毎週、私は愚論荘で痛めつけられるはめになるが。
愚論荘は大きい下宿だ。30人超はいたか。中には怪しい学生住人もいた。そして中には私を痛めつける住人である紺野(仮名)、角松(仮名)がいた。
彼らは徐々に高岡に関わっていった。同じ下宿だからそうだ。彼らもまた愚論荘に毎日出入りしている私のことを認識し始めていた。愚論荘は他人の出入りは基本的に自由。
門限はないに等しかった。それに加え、高岡が住む部屋は管理人がいる本棟ではなく別棟だった。それが愚論荘での私に対するいじめの格好の場所になり最後まで管理人に知れることはなかった。
紺野や角松が高岡に関わっていくうちに高岡も私のことを結構吹聴していたらしい。それが連中の私に対する関心・興味をかき立てた。
高岡と付き合っていくうちに紺野や角松が私に話しかけてきた。そう、高岡+紺野・角松という付き合いパターンが出来上がってしまった。まずいパターンだ。
しかし見抜く術はあったはずなのだ。紺野はやや自己中な言動があった。それが角松が少し愚痴っていた。もらった菓子を全部自分が食べたとか。まぁ角松もかなりの自己中だったが。
だが鈍い私はなんとも疑問に思わなかった。高岡と距離と置くとか考えもしなかった。
やがて私と連中は一緒に授業に出席するようになった。
授業が終わると、愚論荘に直行というパターンになった。
角松が積極的にトランプゲームを勧めてきた。愚論荘では四人でトランプゲームに狂っていた。休みの日も同じくだ。かなりの長い時間ゲームを行っていた。
もちろん、前アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏ではない。当時はトランプという名字の者が大統領になるとは思いもしなかったな。
長い時間延々とトランプゲームに講じていた。だからゲームのやり方進め方に粗相をやってしまうことが時々あった。私も高岡も。
角松は粗相をするとその者の膝のあたりを殴りつけた。皆胡坐をあいていたから。高岡は「やられたら息できねえぞ」って苦笑いしていた。
私は高岡より粗相がやや多くなった。マジで何時間でも続けかねない勢いだったから半分つらかったのもあるかもしれない。大学生が徹夜麻雀をやる感覚なのだ。
紺野は言った。「今度間違えたらプロレス技だからな」と。
ま、そこからいじめが始まったようなもんだ。もうここまできたら連中から距離を取るのは困難だった。親友の高岡がいるから。距離を取ったら絡まれるから。
でも用事があるとか言って連中との接触を少しでも避けるべきだったのだ。
他の人に会ったりとか。その点からしても同じ人間としか付き合わないのは危険なのだ。親友はどんな人間と交際しているか見抜くべきだった。
要点
・鉄は熱いうちに打て。少しでも不安を感じたら直ちに距離を置け。
親友つながりだと困難。でも少しずつ距離を置くことを実行すること。
用事がある、他の人と会う等。
・親友はどんな人間と交際しているか。良く見渡すこと。