「地獄大学」19 他者にいじめがバレるという屈辱。
「あなた因縁が重いね」
幼少期、私はこう言われた。その言葉がいまだに頭にこびりついている。
因縁・・・。前世では私は極悪人だったのか?だから今世で苦しんでいるのか。
その思いが私が占いや風水にハマるきっかけになった。こうしてお祓いなどにすがりつく理由にもなった。私は卒業時にもまた別の占い師の下を訪れることになる。そこで罵詈雑言を浴びることになる。とにかく悪い因縁を取り払いたかったのは事実だ。
そのお祓い関係から私の大学でのいじめが親にバレることとなった。大学三年か。
親との電話で少し授業が開いて暇な時があったら頻繁に帰ってこい!とのことだった。
旅費がかかるし・・と渋ると金の問題ではない!と諫められた。
ある時、父親が片銀大学を訪れた。斎藤教授(仮名・以下斎藤先生)と話し合った。
もちろん、私はその時顔を合わせていないが。
斎藤先生は私のゼミなどに所属していた。年はかなりいっていた。優しいが明朗だった。今はどうされているだろうか。鬼籍に入っている可能性もある。
その斎藤先生に個人的に誘われたこともあった。もちろん、いじめ被害を励ます目的もあった。こういう誘いは苦しくて仕方がなかった。楽しいお誘いなら光栄だが。
私がキャンパス内を歩いていると飯山講師(仮名・以下、飯山先生)が厳しい顔で話しかけてきた。まだ若手で眼鏡をかけたインテリって感じだ。
「ちょっといいかな?」
研究室に連れていかれた。そこで詰問っていうか説教を受けた。
「あいつらと友達なの??友達というならもう何も言わないよ!」
「違いますよ。あいつらは友達なんかじゃありません。いじめ辛いです」
あいつらとは悪党連中のこと。斎藤先生も飯山先生も手を焼いていたらしい。
「〇〇寮の学生たちも君のことかわいそうだと言っているんだよ!」
飯山先生は大学の寮に住んでいた。もちろん寮生も私のいじめ被害を知っていた。
屈辱としか言いようがなかった。大学生になってまでこんな目に遭おうとは。
中学時代を思い出した。中学の時もこんな感じで問い詰められたっけ。
顔面負傷したところも中学時代とよく似ている。
なぜ、いじめ被害者がいじめの事実を告白しないのか?
屈辱だからだ。自分のカッコ悪いところを他人にバレたくないからだ。公になってほしくないからだ。穴があったら入りたい気分になりたくないからだ。
いじめ被害者だってプライドはある。そんなプライドを踏みにじられる気持ちはいじめ未経験者には分かるだろうか。
虫の知らせでは私が大学卒業した後、斎藤先生も飯山先生も所属大学を変えたそうな。
いじめ事件のあった片銀大学に嫌気が差したかどうか分からない。詳しい理由は分からない。しかし恩師の人生を変えてしまったことは確かだ。
そう、私は現世でもまた悪徳を積んでしまったのだ。因縁は巡る・・・。